Z5とZ30、2つのNikon Zエントリー機種の違いを色々と比較してみる
昨年の夏に新しく発売されたZ30。
Zシリーズの中で最もお手軽に使い始められるエントリークラスのカメラでありながら、上位機種に近い操作感で使うことが出来ます。部分次第では上位機種を上回る性能を持っていたり。
そんなZ30ですが、同じエントリー機種の立ち位置にはZ5があります。今回はZ5とZ30について、それぞれどう違うのか、使ってみて感じたコトも交えて比較をしてみたいと思います。
まずはざっくり、どんなカメラ?
Z5はこんな感じ
Z5は2020/8/28に発売されたフルサイズセンサーのミラーレスになります。Z6の弱点であったUIの部分を克服しつつより安価でまとめた印象で、写真機としての性能や堅牢製、UIのバランスが非常に良いです。
撮影性能について(主に)
シャッタースピードはメカで1/8000~30秒です。フルサイズ機でも廉価な機種は最速1/4000までだったりする事が多い中1/8000で撮影可能なので、明るいプライムレンズを日中にNDフィルター無しでも撮れる場面が多いです。14bit RAWでの撮影可能なのでレタッチ耐性も充分な写真が得られます。
ユーザインターフェースについて
ボディはマグネシウム合金が使用されていて、シーリングにより防塵・防滴性能も高められています。上位機種と同じ操作系で、ビューファインダーは約369万ドットで約0.8倍のEVF、SDカード(UHS-Ⅱ対応)ダブルスロットでカスタム設定も写真と動画それぞれ3種ずつ登録が出来ます。ボディ内手ブレ補正も搭載されているので、手ブレ補正の無いレンズでも安心して使うことが出来ます。
弱点について
弱点として連写としては弱めで約4.5コマ/秒です。その分バッファは詰まり難いのですが動体撮影をしたい方にはあまり向かない印象です。動画性能は極端に削られていて、4K撮影は1.7倍のクロップ、スローモーションの撮影も出来ない仕様となっています。表面照射型センサーの測光範囲が-3~17EVなのもあってなのか、高感度撮影時のAFはあまり良くないです。
画像引用元:Z 5 – ミラーレスカメラ | NikonDirect – ニコンダイレクト
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Z30はこんな感じ
Z30は2022/8/5に発売されたAPS-Cセンサーのミラーレスになります。動画撮影に主眼を置いた、Zシリーズで初めてのファインダーレスのカメラです。
撮影性能について
連写は拡張で約11コマ/秒で撮影出来ます。AF性能は他のAPS-C機や一部のフルサイズ機よりも精度や速度が良いです。4K30fpsまで撮影出来ますがクロップ無しで記録されます。フルHDでは120fpsで撮影出来るのでスローモーションも可能です。
ユーザインターフェースについて
モニターはバリアングルでボディ前面にはRecランプが搭載されています。ジョイスティックはありませんが、フルサイズ機とほとんど同じボタン配列で、カスタム設定も3種登録できるのでサブ機として使用もし易いです。
弱点について
APS-C機全てに言えますが、バッテリー蓋部分含めシーリング処理がされていないので防塵・防滴性能には少し心配があります。ボディ内手ブレ補正も非搭載なので動画撮影時は微妙なブレも動画に大きく影響してしまいます。シャッタースピードもあまり速くないので、APS-C用の非常に明るいレンズが発売されたとしても開放F値では少し物足りないかもしれません。
画像引用元:Z 30 – ミラーレスカメラ | NikonDirect – ニコンダイレクト
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2機種の違いと使って受けた印象
大まかに仕様の違いをまとめると。
2機種の違う部分をピックして表にしてみると↓の感じになります。
Z5 | Z30 | |
幅×高さ×奥行き | 約134×100.5×69.5mm | 約128×73.5×59.5mm |
重量 | 約675g | 約405g |
ファインダー | Quad-VGA OLED | – |
測光範囲 | -3~17EV | -4~17EV |
最高連写速度 | 約4.5コマ/秒 | 約11コマ/秒 |
シャッタースピード | 1/8000~30秒 | 1/4000~30秒 |
撮影枚数 | ファインダー使用時:390枚 液晶使用時:470枚 | 液晶使用時:330枚 |
動画記録画素数 | 4K30fps※1.7倍クロップ フルHD60fps | 4K30fps フルHD120fps |
最長記録時間 | 29分59秒 | 125分※フルHD24fps常温25℃ |
インターバル撮影時動画作成 | ○ | × |
対応記録メモリ | SDXC×2※UHS-Ⅱ対応 | SDXC×1※UHS-Ⅱ非対応 |
ボディ内手ブレ補正 | センサーシフト方式5軸補正 | × |
センサークリーニング | ○ | × |
モニター | チルト式 3.2型TFT液晶モニター | バリアングル式 3.0型TFT液晶モニター |
外装 | マグネシウム合金 | 記載無し(恐らくポリカ) |
防塵・防滴性能 | ○ | × |
前面Recランプ | × | ○ |
インターフェース | USB Type-C HDMI Type D 外部マイク入力 φ3.5mm ヘッドホン出力 φ3.5mm アクセサリーターミナル | USB Type-C HDMI Type D 外部マイク入力 φ3.5mm – – |
専用電池型番 | EN-EL15c | EN-EL25 |
Z30でコンセプト的に省かれたものもありますが、優れている部分を色にしています。
静止画性能について
シャッタースピードと連写
Z5の方がシャッタースピード1/8000で撮影可能なので明るいレンズを開放F値で使える場面に強いですが、Z30の方が連写速度は速いです。バッファの開放はZ5の方が速く連続連写可能枚数が多いので、被写体やシチュエーションに合わせてどちらが用途に合っているかを考えて決めると良いかと思います。
測光輝度範囲
測光範囲はZ5の方が低い記載です。個人的に、AFの認識力もZ30の方が優れている印象です。とはいえ流石のフルサイズとも言うべきか、暗所での解像感やノイズ感はZ5の方が良い描写をします。1枚1枚を丁寧に撮影するのか、日常をお手軽に撮影したいのか、その辺りも選択の理由になるかもしれませんね。
インターバル撮影
インターバル撮影とタイムラプス動画撮影の同時記録がZ30では出来ません。インターバル撮影時の写真が欲しいけれどタイムラプス動画も欲しい方に撮って、Z30だと後で自身でタイムラプス動画を作らなければならないので、このあたりのお手軽さはZ5以降のフルサイズ機の方が優れています。
動画性能について
ボディ内手ブレ補正
ボディ内手ブレ補正がZ5では搭載されています。Z30ボディ内手ブレ補正が搭載されていない為、Z5の方がブレを抑えた動画撮影がし易いです。Z30は軽量故にハンドヘルドで撮影する際微妙なブレも顕著に出てきてしまいます。軽量のレンズと合わせて、軽くて対荷重少なめなジンバルと合わせるのならZ30でも大丈夫かと思います。
ボディ内手ブレ補正の有無の影響もあり、Z5ではセンサーシフト式のセンサークリーニングが搭載されていますが、Z30では非搭載になっています。
フレームレート
動画の記録形式はZ30の方が優れていて、Z5では出来ないフルHDでのスローモーション撮影やクロップ無しで4K30fpsでの撮影が出来ます。最大120fpsでハイスピード撮影が出来る分Z30の方が表現の幅が広いですね。
Z5で4K撮影をすると、1.7倍のクロップがされます。FX(フルサイズ)とDX(APS-C)で同じレンズでも画角は異なりますが、DXのZ30よりも更に狭い範囲にクロップされてしまいます。
連続記録可能時間
Z30はフルHD撮影時に連続で120分の記録が出来ます。Z5を含む、Zfcより前の機種は全て29分59秒までで長回しにはあまり向いていません。筐体が小さめなので熱停止のしやすさはZ30の方が上ですが、その辺りは周辺環境を整えたりしましょう。
カメラボディについて
サブセレクター
Z5以上のフルサイズ機種ではサブセレクター(ジョイスティック)がついているので操作性がより高いものになっています。サブセレクターはEVFを覗いている時に親指ですぐに操作できる位置に設置されています。EVFを使った撮影をする場合、この位置にあるのと無いのとでは大きく撮影のし易さが変わります。
Z30はサブセレクターはありません。サブセレクターでの操作に慣れすぎてしまっていると使い勝手が悪く感じてしまったりするかもしれませんが、EVFレスなのもあるのでそこまで大きな影響はないかと思います。
(※Nikonのカメラはマルチセレクターが回転せず、更にカスタム設定で任意の機能を割り当てることも出来ません。これもあって余計にサブセレクターの有無で操作性に大きく影響しないのかもしれません。)
グリッド表示
Z5はグリッドを16分割で表示することが出来ます。それに対してZ30はグリッドを16分割と9分割で表示することが出来ます。構図をより追い込んで撮影したい時、グリッド線を目安に撮影したい時、2種類の表示方法が出来るのは便利に感じる点かと思います。
メディアスロット
Z5はSDXC UHS-Ⅱ2枚のダブルスロットですが、Z30はSDXC UHS-Ⅰ1枚のシングルスロットです。SDカードは静電気に弱かったりと耐久面で少し不安な面もあるので、1度しかない場面や絶対に撮り逃したくない場面を撮影する時はZ5のダブルスロットであることはすごく安心な点です。
防塵防滴・堅牢製
Z5はマグネシウム合金製のボディでできていて堅牢製が高めになっています。バッテリー室カバーやメモリーカードカバーなど、接合部にシーリング処理がなされているので防塵防滴性能もしっかりと確保されています。
Z30はバッテリー室蓋にシーリング処理も無かったりと堅牢製にはやや不安があります。
Recランプ
Z30は、Z5の前面AF補助光の位置にRecランプが搭載されています。動画撮影をする際、前面からでもわかりやすくRec中であることが判断できるようになっています。
モニター稼働方法
Z5はチルト式の液晶を搭載しています。ハイアングルやローアングルでの撮影がワンアクションで出来るのが特徴です。ウエストレベルも含めて、撮影に集中し易く感じると思います。チルト式は液晶の稼働方法の中でも接合部が強固なので、万が一落下してしまっても比較的安心です。
Z30はバリアングル式の液晶を搭載しています。ハイアングルやローアングルはもちろんですが、縦位置での撮影でもローアングルやハイアングルが撮影し易く、前方にも向けることが出来ます。液晶を裏返して畳めるのでモニター表面に傷が入るのを防ぐことが出来ます。
チルト式とバリアングル式は良し悪しあるので、好みと慣れかなと思います。チルト式液晶は縦位置が苦手で合ったり液晶を裏返しに出来ません。前方に向けることも出来ません。バリアングル式液晶は回転軸の関係で堅牢製に心配があったりチルト式に比較して動作がワンテンポ遅れます。最大で開いた際に180度開かないので光軸の角度にズレが出ます。
AFエリアモード
Z5ではAFエリアモード選択で5種から選択することが出来ます。
- ピンポイントAF
- シングルポイントAF
- ワイドエリアAF(S)
- ワイドエリアAF(L)
- オートエリアAF
Z30はそれに加え、
- ワイドエリアAF(L-人物)
- ワイドエリアAF(L-動物)
- オートエリアAF(L-人物)
- オートエリアAF(L-動物)
が追加されています。
Z5自体は人物の瞳AFや動物AFも効くのですが、Z30はより細かく設定することができる様になっています。
搭載端子
Z5は合計5つの端子がボディ側面に配置されています。
- USB Type-C端子
- HDMI Type-A端子
- アクセサリーターミナル
- 外部マイク入力端子
- ヘッドホン出力端子
それに対し、Z30では3つの端子がボディ側面に配置されています。
- 外部マイク入力端子
- HDMI Type-C端子
- USB Type-C端子
コンセプトが異なるカメラなのもありますが、Z30はより必要最低限のもののみの搭載で、HDMI端子もType-Cんいなっています。
ストラップ取り付け部
Z5では吊り金具に三角環がついたタイプをしています。これにより、撮影のアングルに合わせてある程度付け根が動くのでストレス無く撮れる様になっているのですが、Z30はこの部分がプレート式になっています。Z30はVlogを意識して音の出ないプレート式の採用になっています。
どっちを選べば良い?
コスト面でどうなんだろう?
両機種の中古最安価格に5万円ほどの差があります。
そもそも一眼カメラは一般的に安いものでもないです。カメラボディに加えてレンズを買わないとそもそも撮影出来ません。何を撮りたいか、もすごく大切だと思いますが、予算オーバーしてしまうのであればなかなか難しいところ。シンプルに、予算が〜10万円であればZ30かなと思います。
比較的、写真を撮りたいならZ5、動画を撮りたいならZ30
どちらも良し悪しのあるカメラですが、もしどちらかというと写真をたくさん撮りたいのであればZ5が良いかと思います。Z5はフルサイズセンサーなのもあり暗い場面でも充分に写してくれます。ボケ量や広角側の表現でも有利なので、写真撮影での自由度も高いです。
Z30はZ5では出来ない120fpsでの記録が出来ます。4K撮影時の解像度もZ30の方が高く撮影出来るので、どちらかというと動画の方がたくさん撮りたいのであればZ30の方が良いかと思います。
より過酷な環境で撮りたいなら
悪天候な場面での撮影も積極的にしていきたい方は堅牢性の高いZ5を選ぶと良いかと思います。個人的にZ5を買い足した理由の1つでもありますが、Z5は非常に堅牢性が高く、同価格帯付近のNikon以外のカメラと比較してもでも非常に安心出来る作りになっています。
お手軽に使っていきたいなら
SNSへの投稿などがメインであったり、「手軽さ」を前提に考えるのであればZ30が良いかと思います。EVFに関しては、スマートフォンでの撮影に慣れていると意外と見ないものです。EVFレス故に小さくなりますし、重量や写りなどの全体のバランスが整ったカメラになっています。
この機能追加してくれないかなぁ
この2つのカメラに対して少し思うところであり、そこが他社のカメラとの比較ポイントになり得る部分です。
せめて4.2.0 8bit LOG内部記録くらいは出来る様になって欲しいです。というより、出来ないカメラの方がいま少ないのでは?とも思います。おそらくファームではどうにもならないのでしょうが、どうにかしてほしいです。
それと、もっと多くのレンズのリニアフォーカスの対応と全てのボディでリニアフォーカスが出来る様になってほしいです。サブで使うにしてもメインカメラと仕様が異なるとフォーカス合わせで非常苦労しますし、Z30なんか動画に最適化したと謳うのであれば流石に対応してほしいです。
さいごに、余談
つい最近Z5のファームウェアのアップデートがありましたね。どうやらAFの瞳認識精度や速度が良くなったみたいで。「ようやくファームウェア更新だ!」と喜んでいたのですが、人物をほとんど撮らない自分にとっては影響ない部分で試せてない感じです。
長らくファームウェアが更新されていなかったのもあり心配でしたが、2017年発売のD850も更新だったのでまだまだ気長に待てそうな感じがしました。
発売されてしばらく経ったカメラのユーザーを忘れずにいてくれるのはNikonの良いところですね!
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